
晴れた昼下がり、君と散歩に出掛けた。
日差しの柔らかい、春の事だった。
君はいつものように、僕の数歩前を歩く。
元気よく。
少なくとも、僕はそう思っていた。
いつもと変わらない午後の風景。
でも、その時の君の歩みは元気が良かった訳ではなく、怒りの為に勢いが良かったらしい。
しばらくして、振り向いた君の顔、そして放たれた言葉は、驚くべき物だった。
そう、少なくとも僕にとっては。
これまで通じ合っていた思っていた気持ちが、イキナリすれ違う。
君の言葉は、宇宙人の喋る言語の如く、理解が出来ない。
アナタハイツモミガッテネ。
ワタシノキモチナンテ、ドウデモイインデショウ。
そして、僕の喋る言葉も空回りをするように、君には届かない。
僕は、バベルの塔を思い浮かべる。
天にも届く塔を作ろうとした思いあがった人間達に、神様が下した罰の事を。
別々の言語を与え、意思の疎通を出来なくした事を。
僕と君の距離は、1億光年くらい離れてしまった。
それも、突然に。
僕は、君の事が好きだった。
何よりも大事だった。
でも、失ってしまったのは、きっと僕にも原因があるのだと思う。
僕は、1人で今もその原因を探している。
いつか、絶対に探し当てる。
そして、もう1度君に会いに行く。
君がどう思おうと、僕は君が好きだった。
そして、今でも。
きっと、失ったものは取り戻せない。
でも、君の中の何かを欠けさせてしまった理由を知りたい、そして、出来るなら、その穴くらいは埋めさせて欲しい。
それが、今の僕のささやかな願いだ。
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- 2007/06/17(日) 02:37:15|
- 未分類
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| コメント:2
突然に彼女と心が、言葉が、通じなくなったことを、バベルの塔の天罰にたとえたんですね。
感性が詩的でないとこういう発想はできない、さすがairさんと感心しました。
彼がバベルの塔の代わりに、透き通った泉を見つけたら、彼女の心を潤すことができるというストーリーが浮かびました。
- 2007/10/14(日) 11:43:46 |
- URL |
- 銀河系一朗 #-
- [ 編集]
身に余るお褒めの言葉を頂いて、嬉しいやら、恐縮してしまうやら。
ありがとうございます。
バベルの塔の代わりに、透き通った泉をみつけたら・・・、それも素敵なストーリーですね。
読んでみたくなりました。
ぱっと浮かんでくるというのは、さすがですね。
- 2007/10/15(月) 02:29:00 |
- URL |
- air #QRxYfbDY
- [ 編集]