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秘密

beer




「ビールでも飲む?」
静かに、優しく、君が訊く。

そして、僕は追加のビールをオーダーする。

注文してから、ビールが来るまでの間、僕達の間に沈黙が流れる。
それはとても長く感じられ、僕は静かな湖の底へと沈んでいくような気分になる。

君の目を見つめようとすると、君の瞳が微かに左右に揺れる。
困った表情を浮かべないように努力しているのが分かる。

 . . .

数年前、君が僕に訊いた。
「男と女の間に友情ってあるのかな?」

僕は、自分の信念に従い、即答した。
「もちろん、ある。人間的に尊敬出来るかどうかは性別に関係ない。」

君が、少し泣きそうな顔をしたのを覚えている。
そして、僕が内心ひどくうろたえた事も。

その頃、君は、付き合っている彼が浮気をしているんじゃないかと怯えていた。
君の彼は、誤解だと言い、浮気相手ではないかと疑っている女性の事を「彼女は友達なんだ。」と言っていた。
君は、友人だと言われ、それ以上追求できず、かと言って、自分よりも頻繁にその女性と会っている彼の事を容認する事も出来ずにいた。
君は、根本的に、男は女に友情を抱けないものだと思っていたし、そう誰かに言って欲しかったのだ。
彼の浮気を追及する糸口が欲しくて。
僕は、そんな事は知らずに呑気に質問に答えていた。

僕は浅はかにも、そんな君に対して「じゃあ、友達になろう。」と言い放った。
今から思えば、随分傲慢な話だ。
僕達の友情が成り立てば、この男女間の友情に否定的な女性も意見を変えるだろうという、気軽な考えだった。

そもそも僕達は、大学の同じクラスに属していて、出席番号で自動的に決められた実験のパートナーだった。
僕達は 2人で実験を行い、レポートを書いた。

何度目かの実験の後、一緒に食事に行き、雑談をしているうちにそんな話になったのだ。

そうして、僕らは次第に友情を深めていった。
君は、とても機転の利く聡明な女性だったし、鋭い洞察力を持っていた。
それは、男女関係なく尊敬できるもので、僕はすぐに君という友人を持てた事を誇りに思うようになった。

だけど、あろう事か、僕はどんどん異性としての君にも惹かれていった。
女性とは思えないくらいの気の強さ。
自分の考えをとことんまで相手と議論し尽くす論理性。
かと思えば、時折見せる気配り。

僕は、自分の彼女よりも君と話す事に喜びを覚えるようになっていった。


僕は、そうこうしているうちに、つまらない事で彼女と別れた。
些細な喧嘩がきっかけで、会わないでいるうちに気持ちがすれ違い、彼女の方が新しい男を見つけた。
よくある話だ。

問題だったのは、それが僕にはショックではなかった事だった。

そうして、僕は、君を愛しているという自覚をようやく持った。

そして、僕がこんな回り道をしている間に、君と彼の間の問題は解決し、絆は深まっていた。

 . . .

君は、とうに僕の気持ちには気付いていたのだと思う。
そして、僕がその事を言い出すことに怯えていたのだろう。

よりによって、「男女間の友情は成り立つ。」と宣言した僕が、自らの言葉を壊そうとしているのだ。

その時の君の困った顔が目に浮かぶ。

僕は、君が好きだ。
とても好きだ。
君を困らせたくなんかない。

だから、この気持ちは、僕だけの秘密だ。
仮に、公然の秘密だったとしても。
決して口には出さない。
そう、決めている。





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  1. 2007/07/18(水) 10:00:00|
  2. 未分類
  3. | コメント:2
<<ドライブ | ホーム | 変わらぬ風景>>

コメント

ほんと、わずかなことですれ違いが起こりますね。

僕にはショックではなかった事だった。 という行と
君を愛しているという自覚をようやく持った。という行の間に、
自分でも観察できない、すごい劇的な変化が起きてるはずですね。こころって不思議ですよね。ポチッと。

  1. 2007/10/02(火) 22:33:13 |
  2. URL |
  3. 銀河系一朗 #-
  4. [ 編集]

> 銀河系一朗 さん

ありがとうございます。
そう、すれ違いってものすごく些細な事がきっかけで起こり始めたりするものですね。
その時には気付かず、後になって振り返ってみて分かるような事もあります。

仰る通り、その 2 行の間には、複雑な思いと変化があると思います。
驚愕や、(元)彼女に対する罪悪感、その他様々な想いが去来する事をはじめ、
辛い気持ちにもなるし、変化も大きいと思います。
人の心って不思議だと、本当にそう思います。
  1. 2007/10/03(水) 01:24:25 |
  2. URL |
  3. air #QRxYfbDY
  4. [ 編集]

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