
山間の小さな小さな村の外れに、その村で 1番高い塔は立っていた。
おじいさんに聞いても、そのまたおじいさんに聞いても、一体何の塔かは分からない。
「わしが小さな時から、そこに立っておったでな。」
村のどんな年寄りも一様にそう言うばかり。
ある年、都会へ出て行った村の青年が、村にひょっこり帰ってきた。
都会で技師になった青年は、村の外れにあった塔の事が忘れられず、仕事を辞めて帰ってきたのだ。
青年は塔をくまなく調べ、何度も測量をし、難しそうな計算を繰り返した。
そして「そんなはずはない。」「だがしかし・・・」いつも独り言を言って歩いていた。
青年は遠くぼんやりと空を見上げて過ごす事が多くなった。
自分の考えとその非現実性の間でいつも揺れ動き、風に流される雲を見つめて長い時間を過ごすようになった。
都会から青年に付いてきた恋人は不安になった。
何を悩んでいるのか、聞きたがった。
青年は悩んだ末に、夏のある日、星がたくさん流れる夜に恋人と丘に座り、静かに語り出した。
あの塔は、もう何年も何十年も、いや、ひょっとしたら何百年も前に
建てられたものだ。
だから、そんな事はある訳ないんだけど ―
青年は、言葉を区切り、心を落ち着けるように、深く息を吸った。
あの塔は、宇宙へ旅立つ為の発射台だったとしか、僕には
思えないんだ。
小さな小さな、誰も訪れないような小さな村のお話です。
* * *
今夜はペルセウス座流星群。
残念ながら、私の住む街では天気が悪くて見られそうもありません。
そちらは、どうですか?
長らく休眠していましたが、星降る夜に久し振りのご挨拶を。
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- 2013/08/12(月) 20:32:29|
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