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こぼれ種

yellow_flower




彼女が僕の元からいなくなってもう1年になった。
恨んでなどいない。
むしろ、僕のせいで彼女の貴重な何年間かを浪費させたのかと思うと、申し訳なくて苦しくなる。

その一方で、僕は、彼女以外の人を愛する事はきっと出来ないと、確信に近い思いを抱いていた。
それはつまり、僕は一生独りでいなくてはいけないという事だった。

愛すべき人がいない人生、それはとても無味乾燥なものに思えた。
でも、それでもいいと思っていた。

 . . .

そんなある日、窓の下の雑草の中に、花を見つけた。

彼女が窓辺で育てていた鉢植えからこぼれた種が芽を出したのだろう。
見た事のある黄色い花だった。

僕は、取り立てて水を与えるでもなく、雑草を抜くでもなく、放っておいた。
僕の心は、花を見たくらいでは、何も感じなくなっていた。
そして、そんな花の事は忘れていた。

 . . .

翌年、窓の下が黄色に染まった。
あの一輪の花がこんなに増えたのだろうか。
もしかしたら、僕が気付かないだけで他にも咲いていたのかもしれない。

理由はどうでもいいが、窓の下では多くの花が風に揺れていた。
それは魔法を見ているようだった。
黄色い帯を見ているうちに、硬くなっていた心の一部が剥がれ落ち、みるみると心が剥き出しになっていった。
気付くと僕は声もなく泣いていた。

ただただ寂しかった。
彼女を失った自分の浅はかさが、悲しかった。
そして、もう独りは嫌だと思った。
花を見る喜びを、誰かと分かち合いたいと思った。

ひとしきり泣いてしまうと、心が軽くなった気がした。
知らないうちに心に枷をつけていた事に、改めて気付いた。

この花を見ると、彼女を思い出すけれど、それは悲しい感情ではなく、それどころか心の中に温かいものが広がるのが感じられた。
そして、僕は花を育て始めた。

花は増え、僕の家の庭は花で覆われた。
次第に、僕の家の前で足を止める人が増え始めた。
声を掛けてくれる人も。

 . . .

僕は今、多くの人と笑い合い、喜びを共有している。
いつか愛すべき人と出会っても、今なら失わずにやっていけそうな気がしている。






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  1. 2007/07/11(水) 19:33:17|
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