この街角で

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夕餉の香りと風と胃の奥

jasmine




家に籠もって作業をしていたら、胃の辺りがぎゅぅぅと気持ち悪くなってきた。

少し風に当たろうと、重い身体を引き摺り外に出る。
両手をポケットに突っ込む。
こうして無目的にぷらっと出る時にカメラを手にしていないなんて、どれくらい振りの事だろう。

きっとひどく仏頂面をしているに違いない。
外の風は生ぬるく、ツクツクホーシがヒステリックなほどに鳴いている。

10m くらい歩いて上を見上げる。
高い塀の上に、柳のような柔らかそうな枝がなびいている。
あれは何て言う植物なんだろう。

ふと、この空に白い月が浮かんでいないなんて嘘のようだと思う。
こんな空には、薄くて白い月が似合う。

色を失っていく空、風にそよぐ枝、どこかから漂ってくる夕食の香り、この当たり前の空気をどうやったら掴み取れるのだろう。
嬉しくも悲しくもない、かと言って無味乾燥な訳では決して無い、この場所の、この空気。
これをどうやったら、残せるんだろう。


そして、どうしてこんな事を思うんだろう。
誰かに届けたいと思う空気でもないのに。

馬鹿みたいに上を見上げたまま、そんな事を考えていた。

身体の奥底にはぎゅぅぅとした芯が、残っている。




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  1. 2013/09/10(火) 17:37:26|
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秘密の塔

night


山間の小さな小さな村の外れに、その村で 1番高い塔は立っていた。
おじいさんに聞いても、そのまたおじいさんに聞いても、一体何の塔かは分からない。
「わしが小さな時から、そこに立っておったでな。」
村のどんな年寄りも一様にそう言うばかり。

ある年、都会へ出て行った村の青年が、村にひょっこり帰ってきた。
都会で技師になった青年は、村の外れにあった塔の事が忘れられず、仕事を辞めて帰ってきたのだ。

青年は塔をくまなく調べ、何度も測量をし、難しそうな計算を繰り返した。
そして「そんなはずはない。」「だがしかし・・・」いつも独り言を言って歩いていた。

青年は遠くぼんやりと空を見上げて過ごす事が多くなった。
自分の考えとその非現実性の間でいつも揺れ動き、風に流される雲を見つめて長い時間を過ごすようになった。

都会から青年に付いてきた恋人は不安になった。
何を悩んでいるのか、聞きたがった。

青年は悩んだ末に、夏のある日、星がたくさん流れる夜に恋人と丘に座り、静かに語り出した。

 あの塔は、もう何年も何十年も、いや、ひょっとしたら何百年も前に
 建てられたものだ。
 だから、そんな事はある訳ないんだけど ―

青年は、言葉を区切り、心を落ち着けるように、深く息を吸った。

 あの塔は、宇宙へ旅立つ為の発射台だったとしか、僕には
 思えないんだ。



小さな小さな、誰も訪れないような小さな村のお話です。


 * * *

今夜はペルセウス座流星群。
残念ながら、私の住む街では天気が悪くて見られそうもありません。

そちらは、どうですか?


長らく休眠していましたが、星降る夜に久し振りのご挨拶を。

  1. 2013/08/12(月) 20:32:29|
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  3. | コメント:2

逆転ホームラン

□ このお話は、レイバックさん主催の第二回短編競作企画に参加しています □

  「チョコレート」「猫」「携帯電話」というお題を盛り込んだ短編を競作するという企画です。

  詳しくは、レイバックさんのブログ、「ショートショート風呂」の
  「第二回競作企画発表」をご覧ください。




----------------------------------------------------------------



携帯の液晶を眺め、溜息をつく。
さっきから、何度目だろう。

部屋の片隅で、ブランケットにくるまり、動けずにいる。
真っ暗な部屋の中で、携帯のサブディスプレイだけが光る。

傍らに置いてある携帯。
鳴ればすぐに分かる。
鳴らないという事は、電話が掛かってきてないという事。
知っているのに。

それでも、開いて液晶を確認してしまう。
そして、また落胆する。

 "ねえ、今日は電話してって言ったよね?"

のろのろとマグカップを引き寄せ、冷めかかったホットチョコレートを啜る。

「落ち込んだ時には、甘いものだよ。糖分が元気をくれるんだよ。」

そんな事を誰かが言ってた。
ウソばっかり。
元気なんて、1mm だって湧いてこない。

私は、彼からの電話を待っている。
いつも、約束を守らない彼。

電話すると言ったのに、掛かって来ないなんて、日常茶飯事。
それどころか、一緒に出掛けようって、この日は空けておいてって、自分で言ったくせに、忘れる事もしばしば。

私の事を好きだと言うけれど、不安ばかりが大きくなっていた。

 "あなたは、私を必要としているの?"

そんな余計な疑問が、ぐるぐる頭の中を駆け巡る。
もう別れちゃおうかな、そんなこと出来ない、・・・気持ちはぐらぐら行ったり来たり。

そんな事を悩み続ける日々に嫌気が差して、私は 1つの決心をした。


 . . .


今日は、バレンタイン。
それなのに、彼はバイト。

「苦学生だからね、いつ休みたいなんて、贅沢言えないんだ。」

すまなそうに言う彼に、私は微笑み、言ってみた。

「うん。分かった。でも、バイトが終わったら絶対にその日のうちに電話して。」

そう。
今日は、賭けている。

今日、彼がまた、電話すらして来ないようなら、もう、別れる。
大好きだけど、無理して付き合ってもらいたくなんて、ない。
それは、ササヤカな私のプライドだ。


 . . .


そのまま、どれくらいの時が過ぎただろう。

時計を見ると、11時半を回っていた。
ああ、やっぱりダメだったんだ。
そう思うと、涙が零れた。

真っ暗になった部屋にいるのも嫌になって、電気を点けた。

やっぱり、この賭けは、負け試合だったんだね。


 . . .


みゃおん。

窓の外から猫の鳴き声がする。
そして、何かが窓に当たる音。

あれ?
ナナは散歩から帰ってきて、下のリビングで寝ていた気がするけど。

いつもはリビングの窓から出入りをしている飼い猫のナナ。
夜中に出掛けたくなった時、家に入りたくなった時だけ、私の部屋の窓を使う。
就寝が早い両親は、もうとっくに寝ているからだ。

仕方ないな、と窓を開けた。


 . . .


「ごめん。」

彼が何度も言う。

私は、すっかり冷え切った彼の手を握り、無言で首を振った。

窓の外には、猫ではなく、彼がいた。
静かに、私の部屋へあがってもらった。

バイトが終わり、電話しようとしたら、料金未払いで携帯が止められていたらしい。
公衆電話から掛けようにも、私の携帯は、発信元が分からない電話や公衆からの着信は拒否にしてある。

仕方がないので、家まで来たけど、私の部屋の電気が消えていたので、帰ってくるまで待とう思ったらしい。

「まだ帰ってないと思っていたら、急に電気が点いたから、焦ったよ。」
彼は鼻の頭を赤くして、そんな事を話し続ける。

「こんな時間に呼び鈴鳴らす訳にもいかないしさ、猫の鳴きまねしたり、小石を投げたり、もう必死。」
ははは、と笑ったあと、ふっと真顔になった。

「・・・それに、どうしても、これを今日中に渡したくて。」
小さな包みを取り出す。

「バレンタインって、男が好きな女にプレゼントしたっていいんだろ。」
ちょっと照れたように言った。

ふと、時計を振り返ると、11時57分。
電話じゃなかったけど、これ、OK にしちゃっていいかな。

「うん。今日中に間に合ってよかった。本当に。」
これは、私の心の底からの本心だ。
今日中に、間に合ってよかった。
私の中の賭けの点でも。
そして、用意していたチョコレートを彼に渡せる点でも。

「ごめんな。待つってこんなに辛いんだな。今まで、ごめん。」
私の差し出したチョコレートを受け取りつつ、彼が言った。

今度は嬉しくて、涙が零れた。


 "ああ、これは、逆転ホームランって事で、ハッピーエンドって事で、いいんだよね?"

私は、泣き笑いの顔のまま、彼に頷いた。







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  1. 2008/02/14(木) 18:52:53|
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  3. | コメント:21

ささやかな幸せを見つける方法

Caffellatte



僕の住む町の小さなコーヒーショップは、とてもいい雰囲気だ。
大手のチェーン店だけど、都心のショップとはまた違う、居心地の良い空気が流れている。
店員の誰もが、とてもいい笑顔で、元気に声を掛けてくる。
生き生きと楽しそうに働いているその姿は、誰にでも元気を分け与えてくれるかのようだ。

そして、レジで可愛い女の子に、「カッコいいカメラですね。」なんて声を掛けられると、単純な僕はそれだけで幸せになってしまうのだ。






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  1. 2008/01/23(水) 03:15:57|
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  3. | コメント:6

イルミネーション

illumination




「クリスマスには、イルミネーションを見ながら散歩しようか。」

「ごめんね、クリスマスは出張なの。」

 . . .

仕事なら仕方がない。
けれど、出来れば一緒にいたかった。
夜景を見て喜ぶ君が、見たかった。

じゃあ、僕達のクリスマスは、君の出張明けって事でどう?と問い掛ける僕に、君はくすくす笑いながら答えた。

 クリスマスって、キリストのお誕生日よ。
 そんな都合で、お誕生日を変えられちゃたまらないんじゃない?

言われて見れば、確かにそうだ。
でも、僕にとっては、クリスマスは宗教的な意味なんて無くて、イベントの 1つだった。
そんな大昔の人の誕生日って事より、君と過ごせる特別な日って事の方が大事だったんだ。

「大丈夫だよ。彼は心が広いからね、ちょっとくらいの誤差は見逃してくれるさ。」

 . . .

そんな訳で、僕達は、除夜の鐘を聞きながら、年越しそばの代わりにケーキを食べる事になった。
明日は、イルミネーションじゃなく、初詣に向かう人達を見ながら、手を繋いで散歩しよう。





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  1. 2007/12/22(土) 04:14:16|
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